2008/01/19

ボビー・フィッシャーを探して

ボビー・フィッシャーを探して
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実在するジョシュ・ウェイツキンというチェスプレイヤーの父親が書いたドキュメンタリー小説を元にした映画です。公園でチェスに興じる大人たちを見ているうちに、自らもチェスのルールを覚えてしまった7歳のジョシュ少年。あっという間に大人たちにも負けないほどに腕を上げたジョシュの才能に気づいた父親は、かつての名プレーヤーに彼のコーチを依頼します。コーチの元でさらに力をつけたジョシュは、子供のチェス大会の常連となり何度も優勝を果たす程に成長しました。持って生まれた才能を存分に伸ばしてやろうと考えるコーチや父親、ジョシュの優しい性格を傷つけることなく育ってほしいと思う母親、なにより楽しんでチェスをプレーして欲しいと願う、公園でジョシュにチェスを教えたホームレスのヴィニー。勝利やその形にこだわることなく、楽しいという本能だけでチェスの世界に入ってしまったジョシュの成長と、周囲の大人達がそれを見守る様子を描いています。

初めて父親とチェスで対戦した際には、父親を負かしたくないがためにわざと負けてしまったり、ホームレスのヴィニーを使っていないベッドに泊める提案をしたり。しまいにゃトーナメント決勝戦、学校にも通わずにチェス一筋で育てられた対戦相手とのゲームでは、自らの勝利を確信しつつも「引き分けにしよう」と相手に手を差し伸べる有様。ジョシュの優しさを象徴する数々のエピソードを見ると、この子を過酷な勝負の世界に放り込んで大丈夫なのか?と見ているこちらがハラハラしました。と言っても、私がこれが実話と知ったのは、映画のラストでのこと。フィクションと思い込んで見ていたので、改めて色んな意味で感心しました。

ちなみにタイトルにもなっているボビー・フィッシャーとは、アメリカ人として初めてチェス・チャンピオンとなり、全米にチェスブームを巻き起こした後こつ然と姿を消した伝説の英雄。1975年に世界チェス連盟と対立し、しばらく姿を消した後、1992年に突然復帰。再び勝利したものの、またしても消息不明になったとのことでした。

この映画、昨日DVDで見たのですが、消息不明と言ってもこの映画自体が1993年のものだから、ひょっとして今なら何か情報があるかも。後で調べてみよーっと、映画を見終えてとりあえず手帳にメモ。で、今朝食事とりながら朝刊を見てビックリ。なんとボビー・フィッシャーの訃報が掲載されていました。

偶然にも程があるよ!!と、新聞広げたままマジで飛び上がってしまいましたが、その後慌てて調べたとこによると、
・1992年、ユーゴスラビアでライバルのスパスキーに勝利し300万ドル以上もの賞金を得たが、それが米国のユーゴスラビアに対する経済制裁措置違反として起訴され、行方知らずに。
・日本に在住との噂があったが、東欧諸国を回ってホテル暮らしを続けたのち、実際に日本で暮らしていた。
・2004年7月、成田空港からフィリピンに出国しようとし、有効な米国旅券を持っていないと入国管理法違反の疑いで拘束。
・2004年8月、以前から親交のあった日本チェス協会の日本人女性と結婚(入籍はしていない)。
・アメリカ政府からの身柄引き渡し要求を拒否。アイスランドが市民権を与えた2005年以降、アイスランドに滞在。
・2008年1月17日に64歳で死去したことを、現地メディアが報じた。
とのこと。日本にいたんだね。全然知らなかったよ。

ところでこの映画の主人公に描かれているジョシュ・ウェイツキン君、この映画が製作された時点では18歳未満のチャンピオンとのこと。チェスに限らず野球やフットボール、釣りなどあらゆる趣味を楽しみながら、順調に成長したみたいです。天才と呼ばれる人達の多くにつきまとう孤独で不幸なイメージとは無縁なのは、ジョシュが優しい気持を持ち続けていたからかも。自らが楽しみつつ周りの人達への優しさも忘れない…って、それはさほど難しいことじゃないと思うのですが、他の諸々が絡むと途端に複雑になってしまう。バランス良く生きるのも大変なことですな。

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