2007/09/30

国のない男

びっくりするほど涼しい本日。午前中は本を読んで過ごしました。



生前から本書が最後の1冊になることを明言していた、ヴォネガットのエッセイ集。
気持いいです最高に。こうゆうの読めて本当に幸せだと思って涙が出た。と同時にヴォネガットがいない世界に取り残されてしまったという軽い絶望感。帯に書いてある「思わず吹き出したり、胸がつまったり、しばらく考えたり。二十歳の頃の若者のような、もう二度と出来ないと思っていた"震えるような読書"が再び出来て本当に幸せだった。」という太田光の言葉に偽りなし。ヴォネガットさん今までほんとにありがとう。

この本でヴォネガットが引用しているカミュの言葉、
とことん真剣に付き合うべき哲学的問題はひとつしかない。自殺だ。

中学生の時、太陽の讃歌だか反抗の論理だかに書かれていたその一節を読んだ時、目から鱗というか、自分の体からいろんなものが落ちたような気が。何にせよ人は生まれた瞬間から死に向かって生き続けるのだ。と、当たり前の事に気がつくと、世の中を憂うことはあっても自分の身の回りの小さな事に関しては殆ど悩まなくなります。正気を保つコツはピンク・フロイドが教えてくれたし、自分の外の世界と呼応を合わせる方法は池澤夏樹のスティル・ライフに書いてあるよ。

 外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。たとえば、星をみるとかして。
 二つの世界の呼応と調和がうまくいっていると、毎日を過ごすのはずっと楽になる。心の力をよけいなことに使う必要がなくなる。水の味がわかり、人を怒らせることが少なくなる。
星を正しく見るのはむずかしいが、上手になればそれだけの効果があるだろう。 ースティル・ライフ(池澤夏樹)


この一節をしばらくの間はノートや手帖など、身近なものに書き写していましたが、いつの間にかやらなくなってしまった。すっかり覚えちゃってるし、もう見る必要なくなったのかも。その後に読んだリチャード・バックのイリュージョンの"聖書や仏典じゃなくても、スリラー小説でもラブレターの書き方教本でもギターの練習帳でも、どこを開いてもページをめくればそこに自分の知りたいことが書いてある"というような文章を読んで大納得。人は想像力次第でどうにでも生きられるんだね、と思った次第です。

そんな読書をしなくなって、どれくらい経つのか。今はすっかり余生を楽しむかのような本の読み方をしていますが、中高生の頃に読んだ本とか、今読むとまた違う面白さがあるんだろうね。

ピンクフロイドと言えば、再結成して欲しいバンド投票でNo.1に選ばれていたけど、ピンクフロイドって解散してたっけ?言われてみりゃ活動は全然してないけど、はっきりと解散!(by麒麟田村父)とは言っていないような…。私が知らないだけかな。

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